カメラマンからの第一報はじつに衝撃的だった。
「トヨタの新型スポーツを撮った!」
スクープ班は色めき立ってカメラマンの報告を分析しはじめた。とにかく、クーペではなくオープンモデルであったことはハッキリしている。そして、比較的"大柄なクルマ"であったこと。カメラマンが覚えているのは、それくらいのことだった。
「それは非現実的じゃない? あれってスタディモデルじゃないの?」
「でもベースをソアラにすれば、すぐ出てきてもおかしくはないよ。いまのトヨタはどんなものでも出してくる可能性がある。意外なモデルだって考えられなくはないと思うな」
「それにしたって…」
いや、それが現実ならば、こんな面白いことはない。テストコースには、どんなクルマが走っていてもおかしくはないのだから。もっとも「大柄なスポーツ」と聞いて、まず頭に浮かんだのが"ウワサの5000GT"だったのだから、決してヒトのことは言えない。
さて、しばらくするとカメラマンが写真を持って現れた。しかし、あまり表情がさえない。大スクープを撮ってきたんじゃなかったのか?「それが…。まぁ、見てみてください。なんだか妙なクルマなんです」
といって差し出した写真に写っていたのは、ルーフのないウィンダムだった。本誌で掲載するほかのテストカーと同じように、バンパー前面を黄色いネットで覆い隠し、グリルにはテーピングが施されている。それでも、ベースはウィンダムに間違いはない。しかし、そこに写っているテストカーは、単純に「ウィンダム・コンバーチブル」だなどと思えないほどのクルマだった。デキが悪い、というより雑なクルマなのだ。これは、何らかの先行試作車であることは間違いない。
もう一度写真をよく見てみよう。ボディのベースはウィンダム。少なくとも見かけ上はそう見える。しかもルーフがない。ルーフを切断した跡は…なんとガムテープが貼ってある。そして、後部座席のあたりであろうと思われる場所には、急造のロールバーのような逆U字型のパイプが据え付けられている。
さらによく見ていくと、リアドアが見当たらないことに気付いた。サイドシル後部もおかしな雰囲気だ。どうも、ウィンダムのルーフを切断したうえに、ホイールベースも短くなっているらしい。もしかしたら、ウィンダムのボディは単なる擬装で、シャシーはまったく別物。それこそ「FRだった」なんてことだって、あり得ない話ではない。あくまでも先行試作車だと考えれば、どんな可能性も否定できないのでは…。そんなふうに考えていた矢先、ひとりがこう言った。
「次期ソラーラかもしれないね」
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