スクープ

2002年2月


RX-8
マツダ
ツギハギだらけのRX-8テストカーが
走った
スクープカメラマンが捕らえた衝撃のRX-8テストカー。まだボディは未完成で、ツギハギだらけだ。だからなのか、マツダ特有の厳重な擬装も施されていない。
 
ファインダーの向こうを猛スピードで横切っていく白いテストカー。そのサウンド、速度、そして02年初頭に実走している時期から判断して、スクープカメラマンはRX‐8だと確信した。まだ誰も捕らえたことがないマツダの新世代NAロータリースポーツ、RX‐8の世界初・疾走シーンをものにした――そんな気持ちの昂ぶりを抑えることができず、スクープカメラマンは第一報を編集部に入れてきた。

夕刻、待望の写真が届けられた。編集部全員でのぞき込む貴重なショット。しかし、何かが違う。「RX‐8のようだけど、RX‐8じゃない。東京モーターショーの会場で見たクルマはこんなに不格好じゃなかった」。そんな一言から、写真の検証が始まった。確かに編集部のひとりが口にしたように、どうもテストカーがイビツなのだ。

では、スクープ班が分析した過程を振り返りつつ、テストカーの正体を探ってみよう。まずはフロントマスクだ。「このバンパー、どこかで見たことあるなぁ」。そう口にしたスクープ班デスクは足早に去り、1冊のカタログを手にして戻ってきた。差し出したのはRX‐7のカタログだ。バンパーの写真を探し、テストカーの写真と並べてみると、驚いたことにビンゴ! テストカーに装着されていたバンパーはRX‐7のものだった。本来ならポジションランプとターンシグナルが収まる部分も空洞のままになっていて、いかにも間に合わせで使っていることが見て取れる。同様に検証を行ったヘッドランプは、もっとも内側にターンシグナルが収まり、RX‐8でもなければ、アテンザやカペラのものでもないようだ。

イビツな部分はサイドビューにもあった。スクープ班はドアパネル下方に注目。フロントフェンダーとフロントドア、そして独特の形状をしたリアドアにはキャラクターラインが見えるが、フロントドアとリアドアで食い違っているのがわかる。どうやら、リアドアはRX‐8から流用されているようだが、フロントドアは別物であると推測。現在のマツダ車でグリップタイプのドアハンドルが使われている車種は少ないが、どのクルマとも形状や寸法が合致しない。ただし、ドアの下半分、つまりパネル部分のみを流用していて、上半分のサッシュを専用設計に変更している可能性はある。

そして、スクープ班がもっとも驚かされたのが、走り去るリアビューを捕らえた写真だ。RX‐8とは明らかにミスマッチな四角いコンビランプと黒いモール付バンパーは、ナント(!)現行カペラから移植。RX‐8のポテンシャルを暗示する太い両出しテールパイプも、バンパー両端に強引に空けられた穴から顔を出している。ちなみに、アテンザにも両出しテールパイプが採用されるが、全幅に対してもっと内側に位置するため、このテストカーがアテンザに関係しているとは考えにくい。

 

テールはカペラ4ドア

黒いモール付バンパーやスクエアなコンビランプから判断して、テール部分にはカペラが流用されている。バンパー両端から顔を出している太いテールパイプに要注目!

●現行カペラ

フロントバンパーはRX-7

左右とセンターに大きな開口部を持つバンパーはRX-7からの流用品だ。本来ならターンシグナルとポジションランプが入るスペースは空洞のままになっている。

●現行RX-7
 

再びサイドビューの力強いリアピラーを確認すると、後方からサイドへと回り込んでいるウインドウに見えたのは、じつはボディをつなぎ合わせた形跡であることも判明。ボディ後端が未完成なのか、カペラ並みのオーバーハングを設けてトランク容量を確保したいのか、はたまた擬装目的でカペラのテールを使っていたのか、事情はわからないが、もっともツギハギを感じさせる部分だ。

こんな検証を経て、スクープ班は改めてロータリースポーツが21世紀にも継承されることに興奮と喜びを覚えた。まだツギハギだらけでRX‐8の面影はほとんど見られないが、1年後の03年初頭、間違いなくマツダはRX‐8を発売する。マツダへのエールとRX‐8成功を祈って、スクープ班は今後も追跡を続けていく。

ホイールが異なる別のテストカー。リアドアはRX-8のものだが、フロントドアは明らかに違う。ドア下方のプレスラインが段違いになっている。

公道も走った未完のテストカー
スクープ班が捕らえたテストカーは、どうやら公道も走っているようだ。下に掲載したのは広島県の読者Hさんから寄せられたスクープ写真だが、見てのとおり、前ページに掲載したテストカーと同一のクルマである。場所は同じ広島県の瀬戸内海に面する瀬戸田町で、マツダの研究開発施設がある三次市から約70kmほど南下した場所。それにしても、こんなにツギハギだらけのクルマが公道を走るのは珍しいケースと言えるだろう。やっぱり、カペラのテールは擬装のつもりなのか!?
ツギハギだらけで怪しさたっぷりのテストカー。両出しテールパイプはボディ外寄りで、アテンザの両出しテールとは位置が異なる。 やはりRX-7のバンパーを装着しているテストカー。背景の石像とのミスマッチさ加減が笑えるね。Hさん、ありがとう!