ファインダーの向こうを猛スピードで横切っていく白いテストカー。そのサウンド、速度、そして02年初頭に実走している時期から判断して、スクープカメラマンはRX‐8だと確信した。まだ誰も捕らえたことがないマツダの新世代NAロータリースポーツ、RX‐8の世界初・疾走シーンをものにした――そんな気持ちの昂ぶりを抑えることができず、スクープカメラマンは第一報を編集部に入れてきた。
夕刻、待望の写真が届けられた。編集部全員でのぞき込む貴重なショット。しかし、何かが違う。「RX‐8のようだけど、RX‐8じゃない。東京モーターショーの会場で見たクルマはこんなに不格好じゃなかった」。そんな一言から、写真の検証が始まった。確かに編集部のひとりが口にしたように、どうもテストカーがイビツなのだ。
では、スクープ班が分析した過程を振り返りつつ、テストカーの正体を探ってみよう。まずはフロントマスクだ。「このバンパー、どこかで見たことあるなぁ」。そう口にしたスクープ班デスクは足早に去り、1冊のカタログを手にして戻ってきた。差し出したのはRX‐7のカタログだ。バンパーの写真を探し、テストカーの写真と並べてみると、驚いたことにビンゴ! テストカーに装着されていたバンパーはRX‐7のものだった。本来ならポジションランプとターンシグナルが収まる部分も空洞のままになっていて、いかにも間に合わせで使っていることが見て取れる。同様に検証を行ったヘッドランプは、もっとも内側にターンシグナルが収まり、RX‐8でもなければ、アテンザやカペラのものでもないようだ。
イビツな部分はサイドビューにもあった。スクープ班はドアパネル下方に注目。フロントフェンダーとフロントドア、そして独特の形状をしたリアドアにはキャラクターラインが見えるが、フロントドアとリアドアで食い違っているのがわかる。どうやら、リアドアはRX‐8から流用されているようだが、フロントドアは別物であると推測。現在のマツダ車でグリップタイプのドアハンドルが使われている車種は少ないが、どのクルマとも形状や寸法が合致しない。ただし、ドアの下半分、つまりパネル部分のみを流用していて、上半分のサッシュを専用設計に変更している可能性はある。
そして、スクープ班がもっとも驚かされたのが、走り去るリアビューを捕らえた写真だ。RX‐8とは明らかにミスマッチな四角いコンビランプと黒いモール付バンパーは、ナント(!)現行カペラから移植。RX‐8のポテンシャルを暗示する太い両出しテールパイプも、バンパー両端に強引に空けられた穴から顔を出している。ちなみに、アテンザにも両出しテールパイプが採用されるが、全幅に対してもっと内側に位置するため、このテストカーがアテンザに関係しているとは考えにくい。
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