スクープ
2003年 3月

ラグレイト ホンダ
世界初スッピン撮り。デビュー17ヵ月前のグラマラスボディ公開
開発コード UM 予想発表時期 04年8月

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発売1年半前にして次期ラグレイトのナマ撮りに成功した。4月号でお伝えした新型オデッセイとは異なり、こちらは大きなヘッドランプを備えて存在感あるマスクを演出。搭載エンジンは3.5リットルV6だ。

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ダミー状態のヘッドランプを除けば、ほぼ市販版と変わりない表情を見せるラグレイトのテストカー。ラジエターグリルはアコードや新型オデッセイほど5角形が強調されたものではない。

 日本でも輸入販売されてはいるものの、あまりにボディサイズが大きすぎて販売実績が伸びていないホンダのカナダ産ミニバン、ラグレイト。北米ではオデッセイのネーミングで売られているが、その次期モデルのナマ姿をスクープ班が世界で初めてモノにした。市販デビューは04年8月の予定だから、ナント登場17カ月前の超・早出しスクープである。

 ラグレイトといえば、地味なイメージを思い浮かべる読者も多いかもしれないが、その商品性はいたって質実剛健。国産ミニバンにありがちな目先の華やかさばかりを追った装飾や、過剰なほどに柔らかい足まわりなどとは縁のない、使い勝手に優れたミニバンだ。確かに日本の道路事情にはマッチしない部分も否めないが、それも大らかな北米育ちならでは。もちろん、次期モデルでもその堂々とした雰囲気は健在だ。

 スクープ班が海の向こう、メイン市場に据えられている北米某所で捕らえた次期ラグレイトは、ほぼ市販状態に近い完成度の高いクルマだった。ボディパネルはすべてホンモノで、先行開発車両にありがちなツギハギや溶接の跡は一切見られない。唯一、未完成だったのはヘッドランプだけだ。

 外観デザインは現行モデルと同じく、オーソドックスな雰囲気にまとめられており、万人受けするだろう。ボディ側面にも余計なプレスラインは採用されず、スッキリとした出で立ちで嫌みのなさを強調。先に述べたように、ヘッドランプ本体は装着されていないが、バンパーとフェンダーパネルに残された輪郭線から大きなユニットが与えられることは容易に想像できる。日欧向けアコードや次期オデッセイに用いられ、今後のホンダ車にも幅広く起用されると思われていた薄型ヘッドランプだが、どうやら北米向けのクルマは例外のようだ。よくよく考えてみれば、北米産アコードのヘッドランプも3字曲面で構成された大きな瞳で、薄型デザインではない。

 ライバル車でもあるビッグスリーのミニバンにならい、引き続き両側スライドドアを採用。現行モデル同様、重いドアがラクに開け閉めできるように電動開閉機能も装備されるだろう。高級感をもたらすグリップ式ドアハンドルも要チェックだ。

 ウインドウグラフィックは大幅に変わり、ストリームに似た楕円形のクォーターウインドウを新採用!と言いたいところだが、じつはコレはテーピングによる擬装なのだ。ボディ同色テーピングにより、確かに遠目にはストリームに見えるかもしれない。だが、これだけ接近すれば、さすがにスケールの違いと明らかにテーピングであることが識別できる。結果、リアクォーターウインドウもオーソドックスな形状にデザインされてキャビンの開放感と見た目のシンプルさを両立。それにしても、リアクォーター部に加えてCピラーにもテーピングが貼られており、何とも手の込んだ擬装が施されている。ここまで頑張ったのに、どうしてリアにはストリームを模した逆U字型の“なんちゃってランプ”擬装が行われていないのか、逆に不思議なくらいだ。

 インテリアは外からのぞき込むことしかできなかったが、使い勝手と居心地の両方が高いレベルに保たれていることは間違いなさそう。シート配列はフロント1列目が左右セパレート、2列目も左右独立のキャプテンタイプを連想させるアームレストが見えた。しかし、シートそのものが運転席側に寄っている点をスクープ班は見逃さなかった。どうやら、マツダMPVと同様にシートは前後だけでなく、左右にもスライドする模様。この左右スライド機構があれば、時には優雅なキャプテンシート、時には広々と座れるベンチシートと、使用シーンに応じて形態が変えられるのだ。

 コックピットではメーターパネルが運転席前に置かれ、先進感や変わり栄え感を重視したセンターメーターの採用は見送られたことが確認できる。写真の角度では見えないが、シフトレバーは短く成形されてインパネ上に置かれるはず。また、インパネが上下2段構造にデザインされているのも目新しい。このデザインなら、高級感をかもし出すツートン配色も行いやすい。ナビ情報などが表示されるモニター画面は現行モデルよりも高い位置に置かれるため、視認性も改善される見込みだ。次期オデッセイに続き、センタークラスターのスイッチ類は必要最小限に減らされて煩雑な印象も一掃される。

 3ページ掲載のナマ写真では確認しづらいが、搭載エンジンは3.5リットル・V6・i‐VTECのみ。現行ユニットの240ps/33.0kg‐mを超えるスペックを誇りながら、燃費にも磨きがかかって10・15モードで10.0km/リットル前後に達するだろう。「超‐低排出ガス認定」レベルの環境性能を持ち合わせることも確実だ。

 しかし、これで話が終わるワケではない。次期ラグレイトには隠しダマとしてハイブリッド仕様も控えているのだ。グランドワゴンに続くホンダ製ハイブリッド・ミニバンで、V6ミニバン市場ではグランドワゴンとこのラグレイトがハイブリッドカーとして双璧をなす。エコカーの分野ではトヨタが一歩先を進んでおり、エスティマ・ハイブリッドは直4エンジン搭載車がベースに起用されているが、ラグレイト・ハイブリッドは言うまでもなく、V6エンジンがベースとなる。これにIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)が組み合わされ、いっそうの低燃費化が実現。

 ホンダが開発しているV6ハイブリッド・システムには片バンク気筒休止システムが用いられるため、3気筒休止状態でクルーズ(定速走行)やモーターアシスト、回生ブレーキ作動が行われる。もちろん、フル加速時には6気筒すべてが稼働するとともにモーターが働いてアシスト。5速ATの採用と相まって10・15モード燃費は13km/リットルに迫る見通しだ。「なんだ。たいして燃費はよくなさそうだ」といった反響もありそうだが、ホンダ社内では「エスティマ・ハイブリッドが走行性能を大幅に落としてカタログ燃費を追求しているため、ラグレイト・ハイブリッドでは実走行への影響を最小限に抑えつつ、低燃費を追求する」ことが目標に掲げられているという。なお、車両重量はガソリンV6仕様が約2.2t、ハイブリッド仕様が約2.3tとなる。

 本誌既報のとおり、ホンダはエルグランドやアルファードをライバル視したグランドワゴン(仮称)も開発中だが、ラグレイトはより乗用車感覚が強く、全高もグランドワゴンに比べて低い。つまり、グランドワゴンがスペース効率を重視しているのに対し、ラグレイトはあくまでもラグジュアリー・ミニバンの王道を突き進むのだ。よって、グランドワゴン発売後も、ラグレイトは少量が輸入販売される可能性が高い。

 冒頭でも述べたが、次期ラグレイトの発売時期は04年8月。まずはガソリンV6仕様が登場し、ハイブリッド仕様は煮詰められて約2年遅れの06年半ばに加わる。発売に先立ち、コンセプト版が04年はじめのデトロイトショーもしくは同年春のニューヨークショーで公開されるだろう。

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外観フォルムには現行モデルと似たシルエットラインが用いられ、保守的な雰囲気が踏襲される。便利な両側スライドドアが引き続き採用されることも写真からわかる。
ストリームっぽい擬装にダマされるな!

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リアクォーターにはストリームを思わせる丸いウインドウラインが見えるが、これはテーピングによる擬装だ。よ〜く観察してみると、オーソドックスなウインドウグラフィックが隠されているのが確認できる。

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コックピットには丸みを帯びたメーターフードと上向きのセンタークラスターが採用される。上下2段構造のインパネはグランドワゴンや新型オデッセイにも通じるデザイン処理だ。 左右分割にもかかわらず、2列目シートが運転席側(写真は左ハンドル仕様だから車両左側)に寄っている点に注目したい。もしかして、マツダMPVのような左右スライド機構が備わるのか。
ホンダ新生ミニバンの2段構造インパネ
 今回は次期ラグレイトの内外装をまとめて激写することに成功したが、インパネ全体の大まかなデザインが4月号掲載のグランドワゴンや新型オデッセイに似ていることに気づかれただろうか。参考までに両車のインパネを併せて掲載したので、じっくりと見比べていただきたいが、共通項としてインパネが上下2段構造にデザインされているのが確認できるだろう。新生ホンダ製ミニバンのコックピットには一貫したデザインテーマが与えられるのかもしれないね。

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モニター画面の両脇に空調吹出し口が設置されるグランドワゴンのインパネ。 新型オデッセイのセンタークラスターはスイッチ類の少なさが特徴的だ。

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ボディ全体のシルエットは現行モデルから踏襲され、シンプルなイメージのまま生まれ変わるラグレイト。フィットに似た大きなヘッドランプがフロントマスクを特徴づける。

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ノーズ先端を真横から見ると、上方および側面にまわり込んでいるヘッドランプ形状が改めて確認できる。まるでフィットやストリームのランプ形状を移植してきたかのようだ。 居住スペースが犠牲にならないよう、ボディ側面のタンブル(絞り込み)は抑えられている。市販時にはコンビランプがハッチゲートにまで装着され、ワイド感がアピールされる。
現行ラグレイト

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北米では2代目オデッセイとして販売されている巨大ミニバン。5mを超える全長は、さすがに日本の道では大きく感じる。クリオ店専売。
意外にシンプルな和製ミニバンたち
 ミニバン発祥の国と呼んでも過言ではないアメリカ。ビッグスリーに対抗して日本メーカーも北米専売モデルを投入しており、1月のデトロイトショーではトヨタ・シエナと日産クエストが揃って世代交代を果たした。国内で売られているエルグランドやアルファードに比べると、いたってシンプルで個性が抑えられたデザインに仕上がっているのが意外だが、アメリカではコレくらいプレーンなほうが好まれるようだ。

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スクープしたラグレイト以上にオーソドックスな装いを見せるトヨタ・シエナ。 日本メーカー3社の北米産ミニバンの中では、日産クエストがもっとも前衛的だ。


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