スクープ
2003年09月

オデッセイ ホンダ
3つのキーワードで手に入れる 新型オデッセイ


守りに入りすぎたためか、いまひとつインパクトに欠けた現行オデッセイ。ミニバン市場で着々と成功を収めているトヨタから一刻も早くシェアを奪い返すためにも、ホンダは10月17日、オデッセイ一新に踏み切る。新型モデルが手に入れる3つのキーワード「広い」「低い」「速い」に焦点を絞って分析してみよう。

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ブラックパンサー(黒ヒョウ)の筋肉質で引き締まった肉体をイメージしてデザインされた新型オデッセイ。薄型ヘッドランプと宙に浮いたようなグリル内ルーバーがフロントマスクを印象づけている。

広い
 見た目には低いのに、室内長と室内高が見直されて新型オデッセイの居住スペースはいちだんと広くなる。何よりも全高が現行モデルに比べて80mmも低くなっているにもかかわらず、最低地上高は変えずに室内高を5mm拡大。このカラクリは薄型コンパクトチャンバーや扁平ツインサイレンサー、低床対応リアサスペンション、そして現行モデルより30%も扁平化した樹脂製フューエルタンクの考案で約100mmのスペースを浮かせたことにある。

 エンジンのコンパクト化とショートノーズ化により、全長の10mm短縮に対して室内長は50mmも拡大される。ちなみに全幅は1800mmのまま変わりないが、室内幅は5mm広くなる。

 電動化される3列目床下収納シート(上級グレード「L」に標準装備)と現行モデルより90mm低くなるハッチゲート開口下端により、ラゲッジスペースの積載性も改善される。もちろん、多彩なシートアレンジも可能だ。

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ホールド性を重視したフロントシート。シート全体が上下する運転席のラチェット式ハイトアジャスターも備わる。センターテーブルは折りたたみ可能。 2列目シートはクッション引き起こしのダブルフォールディング式だ。カップホルダー内蔵のセンターアームレストは全車に標準装備される。 歴代モデル同様、背もたれを前倒ししてからシート全体を反転させてラゲッジ床下に格納できる3列目シート。電動格納式も新たに設定。

低い
 獲物を狙う直前の低く身構えた筋肉美、鋭い瞬発力、そして躍動感――新型オデッセイのデザインモチーフにはブラックパンサー(黒ヒョウ)が想定された。何よりも見逃せないのが80mmも下がる全高で、ほとんどの大型ミニバンが入れない立体駐車場にも入庫できるのは朗報だ。

 のっぺりとした現行モデルに比べ、新型オデッセイではウエストラインを境に上が引き締まり、下半身は重厚感を増して2段構えのフォルムとなる。Cd値も0.32から0.30に改善され、静粛性アップにも貢献している。

 外観デザインをより精悍に見せるのが切れ長のヘッドランプだ。内側からマルチリフレクター式ハイビーム、ディスチャージのロービーム、ターンシグナルが順に並び、ブルーグリーンのサブリフレクターがクールなイメージを演出。さらに、ハウジングにはOdysseyのエンブレムが刻まれている。鋭い目と目の間には肉食獣の口を思わせるフロントグリルが精悍なイメージを強調し、クロームメッキの横ルーバー3本が浮かぶように配されて立体感ある表情が作り出されている。

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最低地上高や室内高を犠牲にすることなく、現行モデルに比べて全高が80mmも低くなる新型オデッセイのパッケージング図。低重心化とともに大半の立体駐車場にも入れるようになる。

速い
 速いだけのクルマなら、いくらでもある。そんな中、新型オデッセイが実現したのは「快適」「静か」、そして「環境にも優しい」速さだ。

 搭載エンジンは160ps/22.2kg-mを発揮する2.4リットルi-VTEC。10・15モード燃費はFF車で12.2km/リットル(4WD車は11.2km/リットル)、もちろん「超・低排出ガス認定」も取得する見通しだ。これにオーバー2リットル級ではホンダ初のCVT「7スピードモード付マルチマチックL」が組み合わされ、発進直後から食い付き感のある力強い加速がもたらされる。

 サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアにはリアクティブリンク付ダブルウィッシュボーン式が起用される。とくにリアは高剛性&コンパクト設計で、3列目シートの居住性アップと電動化に貢献。

 高い制動力を発するブレーキはフロントが15インチ・ベンチレーテッドディスク、リアがディスクブレーキとパーキング用ドラムブレーキの性能を併せ持つ16インチ・ドラムインディスクで、キャリパーにはアルミ製が用いられる。軽量・コンパクトなデュアルポンプ式4WDも進化を遂げ、前輪空転時の検知能力が高まって雪道などでの発進・加速性が向上。

 「ミニバンは扱いにくそうだからなぁ…」と敬遠している読者に朗報なのが、現行モデルより0.3m縮まってクラストップレベルの5.4mを実現する最小回転半径だ。狭い曲がり角での取り回しだけでなく、全長の短縮と相まって車庫入れでも絶大な効果が発揮されるだろう。

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ブラックパンサー(黒ヒョウ)の筋肉質で引き締まった肉体をイメージしてデザインされた新型オデッセイ。薄型ヘッドランプと宙に浮いたようなグリル内ルーバーがフロントマスクを印象づけている。
オデッセイユーザーのみなさん事件です!
アブソルートが脱ミニバン宣言!?

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専用バンパーやサイドシルガーニッシュ、17インチ・アルミホイールで武装するアブソルート。ラジエターグリルやドアハンドルなどのメッキパーツが専用のダーククローム調となり、クールな印象を放つ。

 94年のデビューからまもなく9年が経過し、10月17日に3代目へとバトンタッチを果たすオデッセイ。日本の自動車市場でセダンとワンボックスカーの間に「ミニバン」なるセグメントを創造した立役者と呼んでも過言ではない。また、それまで走り一辺倒だったホンダを、ミニバン王国に変貌させた第一歩でもあった。その後、ステップワゴン、ストリームと立て続けにヒットを飛ばし、多人数で楽しむクルマを量産するメーカーに変身したかに見えた。

 ところが、ホンダ独特の胸のすく走りを求めるユーザーが少なくなかったのも事実だ。ミニバン市場での競争激化とモデルライフ後半で影が薄くなりつつあった01年末、開発陣が送り出したのがアブソルートだった。もちろん、このアブソルートも標準モデルに引けを取らない進化を遂げて生まれ変わる。

 新型オデッセイ・アブソルートを�g標準モデルと同じ衣をまとった派生モデル�i程度に思ったら大間違いだ。ホンダは今回のFMCを機に、アブソルートをまったく別のクルマに仕上げるくらいの意気込みで開発してきた。

 まず、パワーユニットは標準モデル同様、現行の2.3リットルVTECから2.4リットルi-VTECに変更。標準モデルが10psアップの160psへと強化されるのに対し、アブソルートは圧縮比の見直しと無鉛プレミアム仕様化への変更で一気に200psへと増強される。最大トルクも21.0kg-mから23.7kg-mへとパワーアップ。トランスミッションは高出力エンジンの搭載に合わせ、新たにドライブ・バイ・ワイヤ方式のSマチック5速ATが採用される。専用チューニングが施されるスポーツ・サスペンションに、現行モデルと同じ215/55R17タイヤが組み合わされる。

 装備面ではスマートカードキーがオプションで選べるほか、安全アイテムとしてサイドエアバッグ、3列目シートまでをカバーするカーテンエアバッグもオプション設定。さらに、ABS、TCS、横すべり抑制機構がセットになったVSA(ビークル・スタビリティ・アシスト)、インスパイアで初採用されたミリ波レーダー使用の車速・車間制御クルーズコントロール「IHCC(インテリジェント・ハイウェイ・クルーズ・コントロール)」、追突軽減ブレーキ(CMS)+前席Eプリテンショナーなどの先進安全装備はアブソルートだけに用意される。

 しかし、これだけじゃない。メーカーオプションのナビゲーション・システムはモニター画面が7インチから8インチに大型化され、DVD方式に代わってHDD(ハードディスク)タイプが新たに用いられる。格納式9インチワイドモニターとワイヤレスヘッドホン2個がセット化されたインテグレーテッド・モニターシステムも選択可能だ。

 エクステリアではロアスカート付エアロバンパーとサイドシルガーニッシュが低重心フォルムを強調。内装にもアブソルート専用のレッド照明・立体自発光メーターが採用されて差別化が図られる。さらに、3本スポークステアリングとシフトノブが本革巻きとなり、足元のペダルにはスポーティなアルミ製を採用。専用のブラック・シート表皮も精悍だが、ミニバンでは珍しいレカロ社製シート(オプション)も見逃せない。走りがいまひとつのミニバンに少なからず不満をお持ちのアナタ、これを見ずして契約書にハンコを押すのは考え物ですゾ!

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本革&ソフトウィーブのコンビで構成されるアブソルート専用シート表皮。ブラックの内装色もアブソルートだけに設定されるカラーだ。さらに、オプションでレカロ社製シート(写真右)も選べる。
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標準モデルと同じく、アブソルートにも立体自発光メーターが採用されるが、鮮やかなレッド照明で差別化が図られる。 本革巻きシフトノブはアブソルートの専用装備。ゲート部分のメタル調パネルと相まってスポーティさを演出。 フットレストを含め、ペダル類はすべてアルミ製だ。ドアを開けた瞬間からドライバーに熱い走りを予感させる。

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黒木目調パネルとアルミ&ダークチタン調パーツが精悍な雰囲気をかもし出すコックピット。本革巻きの専用3本スポークステアリングにはオーディオスイッチも備わる。
●はみ出し情報●
新型オデッセイ「M」「L」にはアコードワゴンに採用済みの電動テールゲートがオプション設定される。内装色は「S」がベージュ、「M」「L」はベージュ、モーブ、グレーから選択できる。「L」は本革シートも設定あり。


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