トヨタがモビリオ対抗馬として開発を進めているのがヴィッツ・ベースの「906N」だ。03年夏の発売をめざし、得意の超・短期開発が進められている。とは言うものの、開発スケジュールにやや遅れが発生。当初は03年の夏商戦に間に合うよう、6月頃の発売を計画していたようだが、最新情報によると03年4月に1次試作、同5月に量産試作をこなし、8月に発売されるようだ。
「906N」の売りはモビリオと同じく、コンパクトなボディに3列シートを組み込んだ広い室内スペースだ。モビリオは、ベース車種となったフィット同様、燃料タンクを1列目シート下に配置することでクラスを超えた広大な室内空間を手に入れた。「906N」にはこれほどのエンジニアリング革命は期待できないものの、そこは先行人気車の強みを研究しつくして商品を出すトヨタのこと。3列目の居住性を含めたシートアレンジや室内装備などの点で、モビリオを凌ぐインパクトを身につけて登場するに違いない。
ボディデザインは、現行ノア/ヴォクシーなどにも見られる箱型を強く意識したものになりそう。もっとも、このクラスで広い室内スペースを狙うとなると、こういう手法しか残されていないのだが…。ちなみに、後席ドアにはラウムのようなスライド方式が採用される。搭載エンジンは1NZ-FE型1・5リットルの1タイプになりそうだ。
ところで、6月号で報じた「906N」の先行開発車両は、その後の情報で発売延期になっている次期ラウムとの見方が強まっている。ヴィッツやラウム、スパシオの部品が組み合わされている試作のため、スクープ班も判断に迷ったのが正直なところだ。
それにしても、トヨタの新車攻勢は今年もすさまじい。プラットフォームや部品の流用、設計技術の進化などで、売れているセグメントに対抗馬をすかさず投入する戦術に磨きがかかっている。ミニバン・フルラインナップでマーケットシェアを確保したうえ、モビリオの後発ながら月販4500台をめざす「906N」からは、「ホンダの独走を許すな」というトヨタの意気込みがヒシヒシと伝わってきそうだ。
|