スクープ
2005年 1月

 ランエボIX  三菱
 諸元から装備まで丸ごとキャッチ

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3月の発売に先がけて東京オートサロンに出展されたランエボIX。ラリーアートのブースにドレスアップカーのひとつとして並べられていた。

 どんな世界でも実力が伯仲したライバル同士の真剣勝負は見る者を熱くさせるもの。クルマの世界でボクたちをワクワクさせてくれる勝負といえば、ランエボとインプレッサWRXの対決だろう。04年ラウンドは6月にMCされたインプレッサが235タイヤの採用とハブの改良で欠点を解消、最大トルクが42.0kg-mに引き上げられて優位に立った感があった。そして05年ラウンド。今回も先に勝負を仕掛けるのはランエボのほうだ。

 エボ・ファンの多くは新型モデル「IX」がスペックで逆襲を果たすことに期待しているだろう。しかし、結論から言うと逆転はない。最大トルクはモータースポーツ・ベース車のRSが41.5kg-mにアップするものの、残念ながらインプレッサSTiの42.0kg-mには及ばず、GSRに至っては据え置かれる。

 最高出力も280ps超えは実現しない。馬力に関しては日本自動車工業会が自主規制を撤廃したが、国土交通省は280psオーバーを認めるのはレジェンドのような大排気量車だけで、まるで2リットル車は認めないかのような姿勢だ。もっとも、大量のリコール隠しを行っていた三菱がこの時期に型式申請を行ったことも影響しているかもしれないが・・・。

 しかし、ガッカリする必要はない。エボIXのハイライトはスペックには現れない実質的な性能アップ、新グレードGTの追加、そしてエクステリアの変更だ。性能面ではランエボ初のMIVEC採用が大きなポイント。ただMIVECといっても、かつてのバルブリフト量を変化させるホンダのVTECと同じものではなく、コルト同様、バルブタイミングだけが変わる。

 MIVEC化による最大の効果は低中速域のドライバビリティ向上。高回転域の伸びの良さはそのままに低中速トルクが引き上げられ、最大トルクが3000〜4500rpmという広範囲でキープされるフレキシビリティを身につける。燃焼効率も向上し、燃費は3%アップする。さらに、量産車では世界初採用となるターボのマグネシウムコンプレッサーもエンジンフィール向上に大きな威力を発揮。このマグネシウムコンプレッサーはRSと新グレードGTに標準装備で、GSRにはオプション設定で用意される。

 ハンドリングにも磨きがかかる。サスペンションはエボVIIIMRで好評のビルシュタイン製ダンパーが継続搭載されるなど、基本的に変更はない模様だが、さらなる軽量化でレベルアップが図られる。例えば、スペアタイヤ廃止で約12kg減。カタログデータは変わらないが、これはカタログに表示される車両重量はスペアタイヤを含まないため。これにともない、応急用パンク補修キットが装備されるが、スポーツ走行で便利なエアゲージを備えた電動コンプレッサーがセットされるという優れモノだ。また、GSRとGTにはエンケイ製の新しいアルミホイールを採用、鋳造ながら1本あたり0.15kgの軽量化が実現する。

 快適性が高まるのもエボIXの特徴だ。面密度をアップしたダッシュサイレンサーや二重ウェザーストリップをGSRとGTに採用。

 エクステリアはブーレイ時代に付け足された過剰な処理がなくなり、空力と冷却性能アップに貢献するアグレッシブなデザインとなる。フロントは04年秋に行われたコルトのMCにならって“ブーレイ顔”と決別、メッシュ状の精悍な顔つきに。バンパーは直線的な形状に変わるとともに丸型の冷却用ダクトを新設。リアビューで目につくのが、ウイングの垂直翼とダウンフォース拡大に効果的なルーフエンドのボルテックスジェネレーターがボディ同色化されている点だ。バンパー下部はディフューザー形状に変更されてブラックアウトされることで腰高感を解消。

 もうひとつ、エボIXで注目したいのが新たに加わる中間グレードのGTだ。ラインナップ上、GTはGSRの下に位置づけられるが、快適装備を備えたGSRと競技ベース車のスパルタンなRSのいいトコ取りをした魅力的な存在だ。パワートレーンはRSから流用され、最大トルク41.5kg-mを誇るマグネシウム・コンプレッサー&チタンアルミタービン仕様エンジンとリア1.5ウェイ機械式LSDを搭載。パワーウインドウ&集中ドアロック、フルオートエアコンも装備され、十分な防音・遮音処理が施される。さらに、ビルシュタイン製ダンパーやブレンボ製ブレーキ、レカロシート、17インチタイヤ&軽量アルミホイールといった、GSRが備える魅力のアイテムもおごられる。

 残念ながらGTにはGSRが持つ高性能車の必須アイテム、6速MTとエボならではの愉しさをもたらすAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)が省かれ、オプション設定すらない。「この2点がないとランエボじゃないよ」と嘆くファンが少なくないことをメーカーもわかっているのか、GSRの販売予定台数5000台に対し、GTは1800台にとどまる。税抜き価格は316万円でRSより36万円高いが、追加装備を考えれば納得できる値付けだ。ただし、さらに予算を24万円増やせば最高峰GSRに手が届く。

 じつはGT投入は拡販だけでなく、05年シーズンのWRCグループN参戦に必要なFIAのホモロゲーション取得も目的に含まれている。現在、ホモロゲはGSRで取得されているが、本当はポテンシャルの高いRSで取りたいところ。しかし、年間1000台以上の生産が取得条件となっており、購入者が限られるRSでは実現不可能だ。このため、RSをベースに一般使用にも耐えるGTを発売することで条件をクリアする。スバルがインプレッサWRX・STiスペックCベースの特別仕様車を頻繁にリリースしているのも同じ理由だ。

 ちなみに、GSRではレカロシートの表皮がアルカンターラ+本革にグレードアップ。ボディカラーは4色から6色に増え、ニュルに持ち込まれたイエローソリッドとブラックマイカが復活、そして新色ブルーマイカが加わる。エボVIII MRのイメージカラーだったミディアムパープリッシュシルバーはリスト落ち。

 見てきたように、三菱の看板車種車でもあるランエボは確実に進化を遂げる。3月発売が待ち遠しい。

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ボンネットフードの下には既報のMIVECエンジンを搭載。数値的にはエボVIIIと大差ないが、中低速トルクが太くなって扱いやすさが向上する見込みだ。

ランエボIXのグレード間装備差(編集部予想)

GSR、RSに加えて新グレードGT登場

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フロントグリルからはボディ同色の三角形が消え、開口部はオードソックスな形状に変わる。 リアバンパー下方にはグレー色のディフューザーが装着されて従来モデルとの違いを強調。

ランエボIXとライバル車のスペック比較(編集部予想)

エボ初ワゴン8月鮮烈デビュー
 トミマキ・エディションやAT搭載のGT-Aなど、ランエボ・シリーズでは派生モデルも話題を振りまいてきた。エボIXに続き、8月には本誌が01年4月号(!)でスクープしたエボ・ワゴンが登場する。一度は社内で検討されたものの、お蔵入りになった企画だが、その後、三菱の経営状況が悪化して再びプロジェクトが持ち出された。フロントマスクはエボIXと同じで、リアはワイドトレッド化に合わせてフェンダーパネルやコンビランプが作り直されるという、手の込んだもの。4年の歳月を経て日の目を見るエボ・ワゴンに、どんな反響が寄せられるかな?

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4年も前の01年4月号でスクープしたエボ・ワゴン。コンビランプはワイドフェンダーに合わせて下半分が外側に膨らんだ形状となる。
はみ出し情報
エボIXに対抗し、夏にはインプレッサのMCが行われる。内外装が大きく変わることはなさそうだが、ポテンシャルアップが実現することは必至だろう。今年のエボVSインプ対決も見逃せないゾ!


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