編集部blog
[2008/7/11]
【連載17】元「Xスクープ班」記者の、スクープ秘話

6-2)混浴露天風呂でネタ収集

それから時間を置いて、いよいよテストコース探検だ。テストチームがコースに出ている間に、旅館のロケハンを済ませ、夕方、もう一度、件の宿に向う。
「すいません、予約はしていないのですが、今夜泊まれますか?」
真冬の北海道である。宿泊客は少ない。
「空いてますよ。寒かったでしょう。さぁ、お入りください」
北海道の人は本当に親切である。もちろん、いくらクルマがあると言っても、極寒の北海道である。内陸部では平気で零下20度くらいにはなるところだ。野宿などしようものなら、命さえ危ない。万が一、その宿がいっぱいでも、別の宿を紹介してくれるはずだ。
開発チームも、昼間は一生懸命仕事をするが、そんな場所での楽しみと言えば、「メシ、フロ、サケ」くらいしかない。もちろん日の出が早く、夜が早い北海道では、早寝早起きが基本だ。陽の短い冬場ではなおさらである。
われわれが宿に入ってほどなく、どやどやと団体さんが帰ってくる。彼らがテストチームだ、間違いない。
夕食が終わった頃に、風呂に入る。すでに開発チームのメンバーとおぼしき人たちが気持ち良さそうに湯船につかっていた。お酒も入っているだろうから、湯船ではすぐに打ち解けられる。
「皆さん、お仲間ですか?」
「そうだよ、仕事できているんだ」
「こんな寒い時期に仕事って?」
「クルマのテストをしているんだ」
すでにほろ酔い状態の男性が教えてくれた。隣にいた別の男性は
「コラッ!口が過ぎるぞ」
と、たしなめる。それでも10日、2週間と出張も長期にわたっているから、人恋しいのだろう。
「真冬の風景を見に来た(実際、そうなのだからウソはついていない)」という私たちを疑わない。結局、クルマの話しなどで、やっぱり盛り上がる。とくに技術者の人たちは、クルマの走りやメカの話しは大好きだ。現行車の改善点や開発中の新しいメカニズムの話しなどで、長湯してしまった。頭寒足熱で長湯ができるのも、真冬の北海道ならではであるが、あまりに話しがリアルになってくると疑われてしまうので、ほどほどのところで先に風呂から上がる。
実は、私たちと書いたのは、カメラマンがこの間に駐車場に置いてある仮ナンバー車の写真を撮っていたのだ。当時はいまと違って、スクープに対するガードは極めて甘かった。なにしろ、塀のない場所で、平気でテストをしていたような時代だから。
いまでは絶対にあり得ないけど、テストコースと宿舎の往復にロードテストを兼ねて、試験車両を使っていたわけだ。古き良き時代の思い出である。
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