編集部blog
[2008/6/30]
【連載6】元「Xスクープ班」記者の、スクープ秘話

3-1)「スクープのメッカ」での攻防戦

今回は、どこに行けばスクープの情報を手に入れられるかを、お教えしよう。
だいたいにして、自動車メーカーの工場や研究施設は、都心から遠いところにある。広大な敷地が必要なことに加え、基本的に電車よりクルマの便を優先するからだ。通勤もクルマが主だし、物流は一部例外を除き、トラック輸送が中心である。これを頭に入れて読んでほしい。
お昼どき、工場の中でランチをとる人ももちろん多いが、部品を運ぶトラックのドライバーや、昼夜三交代制で、仕事の行き帰りに外でご飯を食べる従業員も結構いる。こうした人たちが立ち寄るのは、安くて美味くて駐車場のあるところ。そうすると、たくさんはないから、自然と工場付近の繁盛店は決まってくる。
栃木県内のとある工場近く、国道沿いのお店にあたってみる。昼時にロケハンは済んでおり、ランチのお客が多いであろうことは容易に想像がついていた。ランチタイムが終わった頃に、お客の顔をして、お店に入る。ラーメンなど頼みながら、注文を取りにきた女性に声を掛けた。
「おばさん、このお店は流行ってるね。ランチタイムに店の前を通ったら、駐車場所もなかったんで、仕事を済ませて帰りにもう一度寄ったんだよ」
「あら、ありがとね。そうなんだよ。この先に自動車工場があるでしょ。そこのお客さんが利用してくれるのよ」
ビンゴ!! である。その後も、工場従業員の人の情報をさりげなく仕入れて、店をあとにした。お店の人とも、ましてや工場従業員とも、面が割れるほど親しくなるわけにはいかないが、何度か通っていれば、彼らの愚痴話しを、そばで聞いているだけでも、情報は結構とれるものだ。夜になって、仕事帰りに一杯なんて始まると、それはもう大きな声で工場内部の事情を話し始める。いまほど飲酒運転に対して厳しい時代ではなかったが、一応、彼らの名誉のために、運転者は酒を飲んでいなかったことにしておく。
「会社の掲示板にケガ人が出たって書いてあった。あのラインの作業工程は前々から危ないと思ってたんだ」
「給料上がらないよなー。会社は儲かっているのに」
かと思えば、
「ウチのラインで、明日から生産試作車が流れるっていう噂だぜ」とか、
「現行車が社員向けに値引きされた。そろそろ新型がでるのかな」など、実にさまざまな情報が記者の耳に飛び込んでくるのである。もちろん、ウラを取って記事にするまでは壁に耳ありとは、よく言ったものである。スクープ記者として、工場近くの食べ物屋は要チェックというわけだ。
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