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2008年06月30日

【連載12】元「Xスクープ班」記者の、スクープ秘話

4-5)「ウラ広報」と軟禁事件

「電話でご指摘したスクープ記事のネタ元を明かしてもらいたいのです」
あくまでも丁寧語である。だが、取材源を明かすことは間違ってもない。このことこそが、ジャーナリストがジャーナリストとして生きていくための鉄則であり、生命線であるからだ。一線を退いていま言えることは、現役時代に一度たりとも、取材源を明かしたことはなかったということだ。これだけは誇れる。
「それはできない。そのぐらいことは渉外をやっていらっしゃればおわかりでしょう」

「もちろんです。ですからこうして二人だけでお会いしてお願いしているのです。教えていただければ、マガジンXさんにご迷惑をかけない形で、本人を処分します」
絶対に乗れない話しである。口約束に何の保証もないし、一度でも取材源の秘匿というメディアの正義を破ったら、この先のマガジンXはない。
「できないものはできません。取材源を特定したければ、ご自身でなさればよいことです」
「当然、いまでもやっています。ですが分かりません。私も組織の人間として、給料をもらっている以上、実績を残さなければならないのです。わざわざ東京まで出てきて、何の成果もなかったでは許されないのです」
こんな会話の中、Fはそのメーカーの本社がある県警のOBであること、東京の広報部は今回の接触を関知していないことなどを明かした。まあ、後者は鵜呑みにはできないが、前者は噂では聞いていた。自動車メーカーに限らず、世界に名だたるエクセレトカンパニー、もちろんこの会社も東証一部上場企業である、がクレームやトラブルの発生に備えて、こうした人たちを雇っていることだ。それが現実であることを知った瞬間であった。
「言ってほしい」
「いや、言わない」
で、その日は陽が沈む頃まで、部屋にカンヅメにされた。
「今日のところはお引き取りいただいて結構です。また、ご連絡します」
と言って、今度はFが先に部屋を出て行った。まるで、警察での任意の取り調べでのそれである。その日はさずかに編集部に戻る気にはなれず、近くの赤ちょうちんでひとり酒に耽る。こんなときのお酒はやはり苦い。

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