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2008年06月24日

【連載5】元「Xスクープ班」記者の、スクープ秘話

2-3) 「スクープのメッカ」での攻防戦

「N島公園からスクープが撮れる」、こんな話しは業界ではあっという間に広がるものだ。まだマガジンXが創刊される以前から、この公園は「スクープのメッカ」と呼ばれるようにさえなっていた。新型車スクープは、別にマガジンXの専売特許でもなければ、マガジンXがパイオニアでもなんでもない。N誌やD誌の方が早くから、新型車スクープをとりあげていたものだ。

もちろん、メーカーが手をこまねいているはずはなく、一時は自治体に公園の売却を持ちかけたときもあったようだが、それもかなわず、結局、ほどなくして小高い丘の上にある公園のふもとと頂上にガードマンを置くようになった。と言っても、先述したとおり、ここは公共の公園だから、管理者でも所有者でもない一私企業が勝手に制服を着たガードマンを配せることができない。で、みんな私服。サラリーマン風だったり、作業員の恰好をしていたり、果てはカップルを装ったり、それはもう涙ぐましい努力をする。
彼らは、あやしい人を見とがめると、手持ちのトランシーバーで、テストコースにいる担当者に、無線でテストを中断するように、連絡を入れる。
まぁ、確かに私たちはあやしい。公園のふもとに駐車場もあるのだが、ナンバーはすぐ控えられて所属を調べられるし、レンタカー会社ともつながっているから、一度目はうまくいっても、2度目からはクルマを止めたとたんに、頂上に待機している別のガードマンに連絡がいってしまう。夏の暑いさなか、電車に乗って徒歩で頂上をめざした時もあったけど、望遠レンズを入れたリュックを背負っているから、どうしても目立つ。
それでも公共の場所だから、しばらくは彼らも自衛手段を撮るだけだった。ただし、こっちもスクープを撮りたくて必死だから、あの手この手で、ガードマンの目をかいくぐり、頂上までたどり着いて、テスト走行風景を撮る。ある時は、テスト中断の連絡が間に合わなくて、ガードマンがカメラの前に立ちふさがって、露骨に妨害されたことがあった。さすがに暴力沙汰にはならなかったけど、あの時は一触即発だったな。
その後もしばらくN社とスクープ班のいたちごっこは続いたけど、結局、テストの主力が別の工場に移って、いまではネタになりそうなクルマは走っていない。だから、私たちにとっても、N島公園は、駆け出し担当者の訓練の場という以外の場所では、いまはもうない。何年か前に誌面を飾った「空力テスト車」のスクープ写真が、あそこの最大のヒット作かな。
そんなわけで、スクープ写真はたぶん撮れないだろうけど、景色は素晴らしいところだから、興味があったら行ってみてくれ。
もう10年はたったかな、テストコースの反対側に、水族館を併設した遊園地がある。そこのウリが、「海上を走るジェットコースター」なんだけど、このコースターからもテストコースが丸見えだ。そういえばこの会社、経営危機に陥る前は、どこかの遊園地で、ジェットコースター・アトラクションのスポンサーもしてたっけね。

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