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2008年03月15日

グラツーインプレVol.4『アルファロメオ アルファ147 GTA』

147gta_1w.jpg


歴史には残らないもうひとつのGTA伝説

「これほどバカバカしくも楽しいクルマをほかに知らない」。ここ10年でもっとも印象に残っているクルマは? と問われれば、ワタシは躊躇することなくアルファ147GTAを称してこう答えるだろう。残念ながら日本市場ではもうカタログ落ちしてしまったアルファ147 GTAながら、今でも押し出しの強さを競い合ったのなら、スポーツハッチリーグではまず間違いなくポールポジションを獲得するに違いない。ちょっとたれ目でファニーフェイスのアルファ147を、ブリスターフェンダーや挑発的な前後スポイラー、はたまたエアスクープなどの追加で、ネコ科の肉食動物のような獰猛さを演出している。

そんなアルファ147 GTAも、初期モデルであれば200万円台中盤で狙えるようになってきた。新車時には諸経費入れて500万円にも届こうかという、目もくらむようなプライスだったことがウソのよう。というわけで、グラツーインプレ第4弾は『アルファ147 GTA』を採り上げてみたい。クルマ好きの大人が乗れる、スポーツハッチの最有力候補として。試乗した個体は2003年12月登録モデル、左ハンドル、6速マニュアルトランスである。ちなみに簡単なスペックは、3179ccのV型6気筒エンジン搭載、最高出力は250ps、最大トルクは30.6kgmというもの。

今どきめずらしいジャジャ馬

トルクステアが如実に顔を出し、暴れるステアリングを押さえ付けながらスロットルペダルを踏んでいくと、あっという間に1速はレッドゾーンに到達する。クラッチを蹴るようにして2速に叩き込む。まだクルマが暴れる。

そして3速。リミッターはかなり大げさに働く。ランエボやインプレッサといった国産ハイパフォーマンス四駆軍団のようなカミソリのような切れ味鋭い加速ではないものの、公道で楽しむ分には十分なパフォーマンス。シンクロもテスト車両はやや3速が弱っているとは言いながらまずまずの働き。

それにトルク&パワー特性も、お世辞にも低回転でのトルクが太いとは言えず、負荷が掛かった時の息遣いも少々心許ないものながら、上手くエレクトリックデバイスで制御していると感じる。また回転フィールもいまだ荒々しい鼓動が伝わってくる物。しかし、これはどう考えても演出。スムーズに仕上げられるはずなのに、あえてそうしないのだと思う。


心臓部は強力ながら電子制御は未成熟

コーナーが見る見る迫ってくる。軽いブレーキング。ブレンボ製キャリパーが奢られているとはいうものの、それほど期待していなかった(ブレンボといってもピンからキリまである)のだけど、少々オーバーアシストながら必要十分な制動力を示す。

ただASRオン(いわゆるトラコン)だとこの状態でいきなり制御が入る。VDCも同様(さらにMSR、ABS、EBD、エトセトラ……)。構わずブレーキを残しながらステアリングを切り込んでいくと、フロントヘビーゆえにアンダーステア傾向を示しながらも、ある時期を境にオーバーステアに転じリアが流れ出す。ステアリングの舵角はそのまま。リアが流れてフロントが出口を向くまで1、2、3とゆっくり待つ。

クリッピングポイントを舐めてスロットルオン。トラクションが掛からずホイールスピン過多に加え、プッシングアンダーも顕著ゆえに慎重に踏む必要があり、ここでもフロントヘビーのバランスの悪さを痛感する。スポーツLSDが欲しい。というよりFWDでこのパワーは無理があるのではなかろうか。一昔前ならレーシングカーの世界である。ガチガチにボディを補強してスリックタイヤを履いて、という。正直言ってこのシャシーでは制御し切れていない、というのが本音である。


ドライバーに高いスキルを要求

それではASRをオフにしてみるとどうだろう? 同じように3速で回るコーナーを例に採ってみると、進入から立ち上がりまでドタバタしっ放し。それにオーバーステアに転じてからのリアの流れも早く、場合によっては90度以上カウンター側にステアする必要が生じる。

ちなみにそのリアが流れ始める速度域も低く、並みのテスターなら国産車と較べると限界が低いと感じてしまうかもしれない。つまり国産車の多くはかなりの速度域まで微量なアンダーとオーバーを繰り返しながらもリアが粘るようなセッティングであり、ともすればラテン系のクルマたちは「レベルが低い」「技術的向上なし」と評価されがちなのだけど、それは少々浅はかな判断。確かにハイパワーFWDの代名詞とも言えるH社のタイプR軍団の領域には達してはいないものの、実はリアが流れてもそこが限界ではなく、流れ出してからもコントロールが利き、その部分も含めてセッティングしてある、ということなのである。

もっとも多少設定している速度域が異なるのは否めないし、ドライバーに高度なスキルを要求してくるも確か。それにそのエレクトリックデバイスに頼り過ぎている嫌いもあり、さらに言えば同じラテン系のクルマでもプジョーほど巧妙ではないのは事実。しかしそういった『事実ではあるけれども真実ではない』、といったことを見抜ぬけないと本質を見誤る、ということは頭の中に入れておいて頂きたい。


足グルマと趣味車の融合

テストコースをあとにして市街地を走る。クラッチは同じような250馬力オーバーのV6エンジンを搭載するライバルたち(油圧でアシストされ驚くほど軽い)と較べると多少重く、女性や年配の方だと長い渋滞が続いた場合、多少辛いと感じる人もいるかもしれない。が、キチンと整備されている限り動きもスムーズで不当ではない重さである。それにスロットルを踏まずクラッチのリリースだけで簡単にミート可能であり、600回転前後で繋いでもジャダーは出ない。

またこの手のクルマの性格上、オイルに無関心ではいられないものの、トランスミッションは節度感のある操作フィーリングで、シンクロもシッカリ機能し、リンケージ類の精度もまずまずだと感じる。個人的にはシフトノブはもう少し小振りの方が操作しやすいのだけど……。


たっぷりシートの意外な弱点

RECARO製のスポーツシートもタップリとしたサイズを持ち、前後/上下/背もたれのリクライニングといった調整が可能で、ワンタッチでリアシートに乗り込めるように背もたれがパタンと前に倒れる機能も付く。ただ、身長170cmのワタシには多少大柄で、シフトノブ同様ブカブカのジャケットを着ているよう(これはあくまでも体型の問題なので参考程度に)な感覚である。

それにBMWのようにシート先端が足の長さに応じて調整できないために膝裏にシートが干渉し、ペダルさばきに違和感を伴ってしまうのが残念といえば残念。さらにシート座面の前後の高さを任意に調整できないこともあって、お尻と背もたれでバランスよく体重を預けるようにシート座面を調整すると、どうしても一番下のポジションにしなければならず、そうすることによって目線が低く視界が狭まり、小さくて視認性の悪いドアミラーともあいまって、後方あるいは右斜め後方の視界が悪くなるといった弊害も加わる。

特にリアシートにも3人分のヘッドレストが備わるのが逆に仇となり、ワタシと同じような体型の人たちは、慣れるまでは車線変更や料金所では充分気を付けた方がいいかもしれない。やはりこういったモデルでも、日本で乗る分には右ハンドル仕様が欲しいと痛感する。


156GTAよりマイルドな味つけ!?

乗り心地は想像していたものとは異なり、かなり上々の部類に入る。これも個人差があるので一概には言えないものの、セダンバージョンである156GTAよりさらにマイルドな味付けがなされていると感じる。ナックルアームやサスアーム類は同じGTAということで共通だろうが、スプリングレートの設定、ダンパーの減衰力及びセッティング、スタビライザーのセッティングといったものが異なっているはずだ。

高速道路や工事現場などの道路の繋ぎ目を通過する際の、強く急な入力に対しても不快な突き上げは少なく、これなら普段のアシとしても十分使えると思う。そう、同乗の家族からも不満の声は上がらないのではなかろうか。

ラバーブッシュ類の材質も剛性感と柔軟性のバランスが取れた物であり、多少ドライバーが行った操作に遅れて付いてくる感覚が伴うものの、公道用スポーツカーと考えると妥当な選択である。それにダンパーの初期動作が秀逸であり、フリクション自体も減らされて(プッシュロッド表面がスムーズでそれを受けるOリングの精度も高い)いるよう。

ある程度サスを固めながらも乗り心地が損なわれていないというのは、実はそういった理由なのであった。ただ、せっかくならもう少しダンパーの直径を太くするなど容量を増やして欲しかったというのが正直なところ。たとえばサーキットなどで全開走行した場合、この程度のキャパシティでは30分も走らない内に本来の性能を維持できなくなってしまうことだろう。


相反する要素を実現するための課題

それにロール軸が前下がりの上、さらにフロントのロールセンターを重心から遠ざけてしまったために、ステアリングの切り初めの反応はいいものの、そこからスムーズにコーナリングフォースが立ち上がっていかない、という傾向はいまだ残っており、太いタイヤ&固められたサスによってかなりオブラートに包まれ、普通に走る分にはクイックで小気味良く、ニュートラルステアに感じるかもしれないものの、これはセッティングの妙であり、抜本的な改良にはなっていないのは残念なところ。

またサス剛性もそれほど高いとは感じられず、225/45ZR17というサイズのタイヤを受け止められず、ドタバタしているのも興醒め、である。乗り心地とロードホールディング、この相反する項目をかなりの次元でバランスさせていると感じる147GTAだけに、この点も残念である。もしワタシがオーナーとなったならば、ワンランク細いタイヤに履き替えるだろう。街乗りでのアシ+たまのワインディング走行、といった使い方なら、その方がさらに乗り心地が良くなる上に、いくぶん燃費や最高速度も向上するはずだから。

それに何より、もっとヨーのコントロールを楽しめると思う。つまりタイヤの性能に頼ったグリップ走行に撤するのではなく、たとえばFWDといえどもコーナー手前からドリフトさせパワースライドで立ち上がる、なんて楽しみ方も可能となってくるわけである。しかも絶対的な性能が下がるので安全な速度域で……。


147gta_2w.jpg


イタ車ならではのコクピットの演出

内装のクォリティは年を重ねるごとに良くなっていると感じる。一時期のト○タ車には及ばないものの、このクラスともなるとそれなりに高級感を演出するのが一般的になってきたということだろう。立て付けは相変わらず(テスト車両はすでに2万5000kmをあとにし、かなり酷使された状態で、プラパーツが干渉して多少音が出ていた)だが、表面塗装も落ち着きがあり、まずまずのレベルをキープしている。また各部のスイッチ類やレバー類の操作感も及第点で、今やイタ車だからといって内装パーツが弱々しいといった印象はなくなったと言っていいだろう。

パワーウィンドウも合格。ただテスト車両は左右同時に操作するとパワーが弱まる感じで、バッテリー管理は徹底しておいた方が賢明かもしれない。たとえばバッテリーが弱まると電波が正常に飛ばなくなり、セキュリティが誤作動する、ドアロックの開閉ができない、エンジンスタートができない、といった症状が出る可能性がある、ということ。156の際は一旦セキュリティを解除した上で緊急用プログラムを施した経験があるので、147も同様の処置をしなければならないかもしれない。

メーターは少々見づらいと言わざるをえないだろう。カッコは良いものの、日差しの関係でまったく見えなくなる角度がある。「それほど常時メーターを見る必要はない」と言われればその通りなのだが、やはり何か不安。それにブラック地にレッドに光る文字も子供じみており、ほかに方法はなかったのだろうか、というのが正直なところ(VW車のブルー系よりは百万倍マシだけど)。


「イタ車=オーバーヒート」は過去の物

一時懸念されたオーバーヒートも、正常に機能している限り問題ないようである。水温計の針は90度を示し微動だにしない。これは温度を正確に伝えるよりも、国産車のように何か異常が発生した時にだけ動き注意を促す、といった方向にヨーロッパ車も変わってきているのだと思う。個人的にはその水温に合わせて運転の仕方を変えるという習慣が身に付いているので、動かない針というのは逆に不安なのだけど、これも時代の流れなのかもしれない。

また数時間に渡り事故渋滞にハマった際、わざとエアコンを掛けっ放しにしてみたのだが、これでもまったく問題なし。発熱量の多いV6エンジン搭載に伴いラジエター容量(コア増し)が増やされ、オイルクーラーも増設されていることもあり、この程度のストレスくらいではまったく動じないようである。

ちなみに燃費は、撮影のためにワインディングやテストコースをガンガン走った時が7.2km/L、高速道路を100km/h巡航した時が11.2km/L、都市部での渋滞の中で走った時が6.4km/Lというもの。全工程の平均値は7.1km/Lであった。3.2L&250馬力エンジンを搭載するスポーツモデルと考えると妥当なセンながら、もう少し伸びて欲しいというのが本音である。


公道で楽しむ大人のアイテム

さて『GTA』のネーミングを冠した147をどう受け止めたらいいのだろう。ジャーナリスト的に評価すれば、あまり基本設計の良くないシャシーにパワフルなエンジンを押し込み、太いタイヤを履きサスを固め、さらに無理やりエレクトリックデバイスで辻褄を合わせている、ということになるだろう。

それに絶対的な速さだって国産の高性能車に慣れた人たちには少々拍子抜けするものであり、口さがない連中からは「ブランドイメージだけで中身がない!」と言われかねない状況である。

しかし逆の捉え方だってできるはずだ。公道で楽しむ分には十分なパフォーマンスであり、理想的なパッケージングではないもののセッティンでここまでまとめ上げれば上出来、さらにはほかのメーカーのクルマでは得難い魅力、つまり数字やデータでは表現できない色気や刺激といった物を持ち合わせている、と。

個人的には? そう、個人的には公道で楽しむ大人のアイテムと考えた場合、この程度がほど良いバランスなのでは、と感じる。そしてハード面の仕上がりやセッティングの方向性、そしてアルファロメオの置かれた現在の状況、そのほかもろもろ……をすべて踏まえた上で、ちょっとでも興味があるのなら一緒に暮らしてみるのも悪くないのでは、と思う。もちろん立場上、工業製品としての品質の向上や安全装備の充実、環境への配慮、といったことをメーカーにしつこく言及し続けるだろうけど……。

というわけで、乗り心地とロードホールディングの両立、刺激的な演出が成されたエンジン、少しづつでも向上している品質、そしてメーカー自らが『GTA』のネーミングを冠したという重要性。やはり147GTAはクルマ好きにとって捨て置けない存在だと感じる。そしてそれらをすべて理解した上でアルファロメオのある生活を楽しむのが粋な『大人のクルマ遊び』ではなかろうか。
(Honkan)


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