グラツーインプレVol.3『スバル・インプレッサ15S』

まな板に乗せるのは1.5LのFWD/4AT
どうしてまともなドラポジが取れないのだろう? どうして足まわりはこんなに雑な動きなんだろう? どうしてABSはこんなに早く介入するのだろう? どうしてこんなに燃費が悪いのだろう? 新型インプレッサに乗ったワタシの頭の中は“?マーク”で一杯である。たしかにワタシは20年も昔のクラシックカーではなく、最新の国産車をテストしたハズである。しかもコストしか考えていないどこかの白物家電のようなクルマではなく、スバルが自信を持って送り込んできたインプレッサの新型車である。
ボディスタイルに関して言及するつもりはない。これは個人の嗜好が大きく関わってくるものだから。皆さんの目で厳しく評価してもらえればそれでいい。ワタシがチェックするのはクルマ好きの心に訴えかけるハード面を持っているか、あるいはチューニングが施されているか、である。
適切なドラポジが取れないシート環境
ドライバーズシートに座った瞬間から雲行きは怪しかった。上下の調整幅が大きいのは評価できる。しかし座面と背もたれの角度設定や、ペダル&メーターとの位置関係がいまひとつなのだ。しかも表面がやわらか過ぎる上に生地が動き、30分もしないうちにカラダがずり落ちてしまう。というより背骨をまったくホールドしてくれない。今回も1000km近く走ってみたのだけど、これほど腰やお尻が痛くなったのは久しぶりである。
ステアリングはチルト&テレスコピック機構付き。しかしコラムまわりの剛性は少々心もとない。調整幅を確保することに気を取られ過ぎたのか、それともステアリングから振動が伝わるのを嫌ったのか、剛性感が感じられない操作フィールになってしまっている。
足まわりの雑な動きに興醒め
足まわりのチューニングにも疑問が残る。普段乗りのクルマだから、ソフトな味つけは大賛成である。インチキに固められた足まわりなどゴメンだから。しかし重心高に対してロールセンター高の設定が低過ぎるのか、やや不安を伴うロールなのだ。足はよく動いている。が、リアのストローク量は不十分で、その動きもスムーズさに欠ける。ストレートに言ってしまえば、ギコギコしている上に各アームがバラバラに動く感じ。
乗り心地もあまり誉められたものではない。履くタイヤ(ヨコハマASPEC/195-65R15)の影響も大きいとは思うのだけど、急な入力があった場合など、思いのほかガツンとくる。そして1度で収束せず振動を引きずる。スプリングとダンパー、そしてブッシュ類のバランスが適切ではないのかもしれない。また雨や雪の中でバランスを崩しやすかったこともマイナス材料である。
ABSの介入も早過ぎ。ドライ路面では初期タッチ/制動力の立ち上がり方/リリース前後のマナー、などは悪くないものの、路面状況が悪化した場合やちょっとスピード域が上がると、ドライバーがコントロールすることを無視するように制御が入る。百歩譲ってこれがこのモデルのユーザーに合わせたセッティングだとしよう。ならばVDC(ビークルダイナミクスコントロール)が装備されないのはナゼだろう。S-GTでスポパケを装備した時にだけオプションで選べるに過ぎないのは理解に苦しむ。ベーシックなグレードにこそ必要な装備ではなかろうか。コストを考慮したとしてもそうすべきである。
伸びない燃費に四苦八苦
燃費が悪かったことも驚きである。トータル971km走って97L。平均燃費は10.0km/Lだ。シチュエーションは都市部での渋滞/夜間走行/高速道路/ワインディングなど。エアコンはON/OFF半々。ちなみにワタシがテストするまでの累積燃費は8.1km/L(返却時は9.7km/L)という表示だったから、1.5LのFWDモデルとしては最悪と言っていい数値である。
水平対向エンジンや4ATが悪いとも時代遅れとも言うつもりはない。どんな方式でもかまわない。直列でもV型でも、CVTでも多段ATでもいい。結果が伴えば。ぜひスバルの開発スタッフには、もう一度この辺りをジックリと再検討していただきたい。

オツリがくるほどある居住空間
逆に評価したいところもいくつか。室内の居住空間は文句なし。特にリアはオツリがくるほどある。ボディ上部が絞り込まれている関係で頭まわりはそれほどではないものの、肩まわりは余裕しゃくしゃくだし、身長170cmのワタシにフロントシートを合わせると、膝まわりは120mmものスペースが生まれる。1740mmという全幅や2620mmというホイールベースが利いていることは間違いない。ただ古い考え方かもしれないが、5ナンバーサイズでこの広さを実現して欲しかったというのが正直なところ。
またこれだけの車高を持っているのだから、もう少しリアのヒップポイントを上げても良かったのでは、とも思う。その方がフロントとのバランスが取れるはず。それからアイボリーのインテリアカラーも悪くない。国産コンパクトカーではめずらしい選択ながら、まずまずと評価していいクオリティとも相まって、インテリアは実に明るい雰囲気である。
ヘッドレストも大きく剛性感があるもの。特にリアは後方視界を確保するために収納タイプを選択したいところだが、ここはあえてフロントと同等の物が装備されている。ただ、5人乗りなのに中央部が省かれているのはスバルらしくない手抜きである。
油圧式パワステの感触は合格
ミラーtoミラーは1980mm。3ナンバーとなった全幅の割には出っ張りは少ない方ながら、大きさを感じる運転感覚だけに、慣れるまでは路地裏でのすれ違いは気をつけた方がいいかもしれない。また適切なガラスエリアのおかげで、閉所感あるいは無防備感はないものの、周囲との距離感がつかみにくく、暗いところでの縦列駐車も、これまた慎重にいくべきだろう。
走り出してすぐ気がついたのがパワーステアリングである。人間の感性を無視した味つけの電気式が多い中、頑固に油圧式を採用している効果は絶大である。ギア比はややスローながら、切りはじめからタイムラグなしに反応し、負荷が掛かった際もスムーズさを失わない。過度な演出もなくドライバーが行った操作に忠実。クルマ好きなら重要視したいポイントである。これで足まわりのチューニングや、タイヤの選択がまともならもっと活きてくるに違いない。
フラット4ユニットに明日はある!?
可変バルタイが採用された1.5Lエンジンのフィーリングは良好。1260kgの車両重量に110psの最高出力と14.7kgmの最大トルクは必要にして十分。低回転域でのトルクの細さは相変わらずながら、7000回転のレッドゾーンまでスムーズに吹け上がる。それに薄味にはなっているものの水平対向の鼓動はたしかに伝わってくる。ただECOモードの使い方は確信が持てなかった、というのが正直なところ。いろいろと試してはみたものの、信頼に足るデータを導き出すには1000kmでも少々足りなかったようだ。ノーマルモードでキックダウンさせない、あるいはマニュアルモードで随時変速させる、といった際のデータをもう少し集める必要がある。
またエンジンフード裏には遮音材が備わり、ベーシックグレードでも防音に気を遣っているところや、フード支持にダンパーが用いられているところ、さらには対人衝突を考慮した構造を採用している、などはスバルらしく好感が持てるところだ。
煮つめ不足を感じる国内仕様
さて、新型インプレッサをどう評価すればいいだろう。期待が大きかっただけに、やや失望を感じているというのが偽らざる本音である。もしかしたらこう考えるべきなのかもしれない。ベーシックグレードゆえ価格を考えれば仕方がないのだと。その代わり2L&4WDモデルやSTIバージョンはまったく別物で、それらは素晴らしい出来になっている、と。
いや、実際にもっとも売れるグレードはこの1.5LのFWDモデルのはずだし、メーカーもそれを十分意識して開発しているはずである。スバルフリーク以外のクルマ好きが、初めて触れるスバルになる可能性が高いモデル。言い替えれば“スバルの顔”である。それがこのレベルでいいわけがない。もし、ヨーロッパで大ヒットさせたいと考えているのなら、なおさらである。もっとも国内向けと違って輸出仕様は、その辺りをジックリと時間を掛けて煮つめている可能性は無きにしも非ず、ではあるのだけれど。
ちなみにオートエアコン、ナビシステム、キーレス&プッシュスタート、イモビライザー、外部入力端子(映像可)、本革巻きステアリング&シフトノブ、ステアリングオーディオリモコンスイッチ……、これらの使い勝手はまずまずで、やはりあれば便利と感じる装備。ただ、残念ながらすべてオプションである。15S(FWD/4AT)の151万2000円というプライスは魅力的ながら、オプション選択は慎重に行うべきだろう。なぜなら気がついたらいつの間にか200万円オーバー! なんてことになりかねないから。
これまでのスバル、これからのスバル
現在、もっともクルマ好きが乗るに値する国産車、そう考えて新型インプレッサをテストした筆者。しかしながら1000kmを共にして導き出された答は『NO』である。残念ながら現状ではそう結論づけるしかない。
トヨタ傘下になったことでコスト管理など、さまざまな制約でがんじがらめにされ、これまでのようなクルマ作りができなくなってしまった……。そんなことを今さら言っても仕方ないことである。それは初めから解っていたこと。問題はその厳しい制約の中でいかにスバルらしい仕事ができるか、である。たとえ10のうち9つ譲ったとしても、最後の1つだけは絶対に譲れない。そんな姿勢が感じられればクルマ好きは必ず支持してくれるはずだ。
同様にどんなに負け続けようとも、どんなに会社の経営が逼迫しようとも、WRC(世界ラリー選手権)に代表されるモータースポーツは絶対に続けるべきだと思う。マニアックなファンは増えるが、一般の人たちへの販売促進にはつながらない、そう揶揄する人が多いことは十分承知している。しかしそれは逆なのだ。一般の人たちほどブランドイメージを、もっと言えば世間体を気にするものなのだ。スバルはそういった人たちの心を揺さぶる必要がある。加えてもっと効果的なプロモーションテクニックを学ぶ必要があると思うのだ。
(Honkan)






