ヒーロー伝説Vol.3 ランチア・デルタ・インテグラーレ・エボⅡ

大きく張り出したサポートをもつレカロ製のバケットシートに身体を滑り込ませ、キッチリとドラポジを決め視線を上げると、そこには弁当箱のようなプラスチック然としたインパネが目に入る。左から速度/電圧/ブースト/燃料/水温/回転の各メーターが並び、そのすき間にライト類やバッテリーなどの警告灯が配される。油温と油圧はその右隣のセンターコンソールだ。
コラム脇のイグニッションスイッチをひねると、インジケーターが一斉に点灯し、その直後エンジンはグォォォーンという音とともにあっさりと目を覚ます。たかが2Lの4気筒ターボとは思えないほどの迫力だ。さっそく1速にギアを送り込み、意外に軽いクラッチをつないで走り出す。16Vまでは3000回転以下ではまったく使い物にならず、シリンダー内で異常燃焼を起こすような嫌な感覚があったのだけど、エボはずっと力があって扱いやすい。
そしてさらにスロットルを踏み込むと、3000回転を超えた途端、一気にターボパワーが炸裂する。背中を蹴飛ばされたかのような加速感。しかもピストンやバルブの動きが伝わってくるような激しい息づかいである。
驚いている場合じゃない。数秒後にはコーナーが待ち受けているのだ。私はダッダッダッとABSが働くのも構わずにフルブレーキングしてシフトダウン。ブレーキの利きは申し分ない。踏み応えもイタ車にありがちなブヨブヨじゃなくシッカリしたもの。そしてゆっくりとステアリングを切り込んでいく。切り初めやコーナー頂点での反応も良く、アンダーなんかまったく感じない。吸い込まれるようにインにアタマが入っていく。それにスロットルのON/OFFに対する姿勢変化が少ないのも特徴。さらにクリッピングポイントを狙ってスロットルを踏み始めると、いかにも「四駆だぁ!」というトラクションの高さを示し、すぐさまスロットルを底まで踏み込むことができるのだ。
私はあの時本気でインテグラーレを買おうと思っていた。見かけは4人乗車が可能な5ドアだし。これなら家族をダマせるはずだと。しかしすんでのところで見破られてしまった……。それに買うと決断できなかった理由が他にもあった。警告灯が全部点いて止まってしまうなんてしょっちゅうだったし、駆動系から嫌な音がすることも一度や二度ではなかったのだ。しまいには「あ〜あ、今日も華やかでいいねぇ!」と気にしなくなったほど。
未熟なショップではタイベル交換も大騒ぎになる上に、パーツの供給が次第に苦しくなってきたインテグラーレ、それにやたらイジリ物がやたらと多いのも特徴。それでも私はこの愛すべきストリートファイターを好きにならずにいられない。レストアしてでも乗りたい。(Honkan)





