面倒くさい?
最近のNHKからは妙にやる気を感じます。
名前もよくわからないお笑い芸人が多数出演する低俗な民放のバラエティ番組から毒気を抜いたような、見るも無惨なバラエティ番組や、滅茶苦茶民間企業の宣伝をしているのではないかと疑いたくなるプロ野球中継なども放映していますが、ここのところの「NHKスペシャル」は意欲作品が目白押しでした。(ピシ)
気になったものではまず深夜高速バスの実態を取り扱ったものです。格安深夜高速ツアーバスを企画する、業界大手といわれる旅行代理店の社長が、「安全運行とコストダウンは両立できる」などと、テレビカメラの前で平気で言ってのけたときには思わず閉口してしまいました。タクシーも含め、旅客運送事業というものは運転手さんあって成り立つ労働集約型事業であります。コストダウンといって運転手さんに無理な運転をさせれば即事故につながるのは業界に携わるものなら誰でもわかることです。多少業種は異なりますが、タクシー会社で運行管理者をした経験のあるピシから見ても、「丁寧に取材しているなあ」と思いました。
続いては談合の実態を取り扱ったものです。関西地方の某都市で実際に行われた談合の秘密録音テープの紹介など、少し前のNHKからは想像できないほど気合いの入った番組のように感じました。
そして一番楽しみにしているのがシリーズ物となっている「激流 中国」です。「奇跡の経済発展」などともてはやされる中国ですが、そこに急速な経済発展による社会の歪みがはびこっています。計3回取材で中国を訪れたピシですが、その荒んだ社会状況は実際現地を訪れないとなかなか実感できないものであります。
すでにシリーズは3回目を迎えました。最新のものは6月10日に放映された北京の水不足を取り扱ったものです。いままでも所得格差など、いわば中国の恥部ともいうべきテーマを扱ってきており、言論統制された一党独裁体制をとる中国では、中国政府の全面協力なくして取材できないでしょう。権威に弱い中国では公共放送であるNHKだからこそ取り組めるテーマかと思います。さきほどは全面協力などと表現しましたが、体よく監視されているようなものですから、中国の社会問題といっても中国政府に都合の良い社会問題になっていることは容易に想像がつきます。しかしそんな面倒な手続きを経て取材された内容はとても興味深いものです。NHKらしい、始めに結論ありきみたいな番組展開がちょっと気になりすぎますが…。
このような社会派ドキュメンタリーは民放では皆無に近くなってきています。適当に芸能人を集め、クイズやゲームをさせていたほうが簡単ですし、視聴率も稼げるからでしょう。一方ドキュメンタリーは取材対象の嫌がるものがテーマですので、時間や労力、そして時にはお金などとにかく面倒がかかる割りには視聴者には敬遠されるでは、広告スポンサーの顔色最優先の民放では番組として成立しないのでしょう。しかし、多々問題を起こしているとしても、面倒なこととわかっていながら、取材に取り組み、そして番組を成立させているNHKと、その他民放では明らかに放送局としてのステイタスが異なります。本誌でも引き続き「面倒なこと」に積極的に取り組み、読者のみなさんへ有益な情報を提供していきたいと考えております。(ピシ)





