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2006年10月10日

「ロリータ」

1954年、ウラジミール・ナボコフによって書かれたこの小説は、もはや現代クラシックというポジションを築いているのではないだろうか。
ヨーロッパからアメリカに亡命した、中年の大学教授ハンバートが、少年時代の失恋相手がいつまでも忘れられず、その面影を下宿先の12歳の少女に見いだす。ハンバートはロリータをだまし、アメリカ中を逃亡するが、ある日、ロリータが行方不明になってしまう。物語は悲しい結末を迎えてしまうのだが、ハンバートの獄中の手記という体裁を取っている。

内容としては、他愛のないメロドラマとも言えよう。だがしかし、9歳から14歳までの間の少女を「ニンフェット」と定義する有名なくだりをはじめ、ロリータの魅力についての描写や、少しでもバランスを崩したならくどいともとられかねない、細部への妄執など、何度読んでも新しい発見のある、蠱惑的な小説だと思う。
自分はこの「ロリータ」を、キューブリック版、エイドリアン・ライン版と2本の映画を見たが、やはり2時間程度の映像では、小説の圧倒的な力にかなわない。とくにキューブリックはスペシャルな監督だと思うが、その彼の力を持ってしても、映像は陳腐なものであった。
出版の不振が喧伝される現在であるが、映像よりも心を惹きつける小説というのは、あるのだろうか。
ナボコフが次のような定義を行っており、それに則るとするならば、残念ながらごくわずかしか存在しないのではなかろうか。「私にとって小説作品は、直截に美的悦楽とでも呼ぶべきものを与えるかぎりにおいてのみ存在する。その悦楽とは、芸術(好奇心、やさしさ、思いやり、恍惚)が規範となるような精神状態と、何らかのかたちで、どこかで結びついた存在感だ。そのような作品はそれほど多くはない。」(※『ロリータ』大久保康雄訳/新潮文庫刊より)
(征夷大将軍)

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